税の扶養と保険の扶養は別々に申請しよう

こんにちは、FPマックです。

あなたは、所得税に関する扶養の手続きと、社会保険に関する扶養の手続きが全く違うという事実をご存知でしょうか?

 

つまり、この2つの扶養の扱いは別々であり、分けて申請することができるということなのです。
分けて申請するなんて面倒くさいとお思いかもしれませんが、実は分けて申請した方がお得なケースがあるのです。
そうすることで、またひとつ賢く人生を謳歌することができるのです。

 

但し、前提条件として扶養者が2人以上いる場合を想定しています。扶養者は配偶者でもいいですし、実父や義父でも構いません。
扶養を分けて申請するには複数人の扶養者がいることがまずは必要となります。そして、現時点で扶養者に住民税が課税されていることも想定しています。

今回ご紹介させていただく方法でメリットを享受できるのはこれらの条件を満たしているご家庭となりますが、家庭事情の変化などで条件を満たすこともあるかも知れません。知っていて損はない情報となので、是非最後まで読んでいただければと思います。

 

今日はこの2つの扶養の違いを理解頂き、上手に申請することで税金を節約できるという事実を丁寧に説明していきたいと思います。
後ほど具体的に説明していきますが、賢く申請することで以下のメリットが発生します。


住民税を非課税にする(非課税になることでその他のメリットも発生する)
臨時福祉給付金の受給対象者になる(但し、住民税課税者に扶養されていないことが条件)

 

意外な事実を知ることで、今後の人生を豊かにして頂ければ幸いです。

 

扶養とは

まず初めに、扶養とは何かということを確認しておきましょう。

扶養とは一般的に、「自分の力だけでは生活を維持できない者に対する生活上の援助」のことを指します。子供を養育している、高齢の親を経済的に援助している、その他親族の面倒を見ているなどが該当します。

 

では、扶養控除とは何でしょうか?
年末調整や確定申告の際に、必ずと言っていいほど耳にする言葉ではないでしょうか。

 

扶養控除とは、所得税や住民税の税額計算の際に課税対象額から一定金額を差し引くことです。
そうすることで、税金が課税される母数の収入金額を低くできるため、結果節税になるのです。
一言でいうと、扶養控除が適用されると、税金が安くなるということです。

 

扶養対象者がいる場合のメリット

扶養対象者がいると扶養控除を受けることができ、税制的優遇や社会保険料の免除を受けることが出来ます。
特にサラリーマンは社会保険に関しての優遇措置として、配偶者の厚生年金保険料や扶養者の健康保険料の免除などがあります。

 

その他には、年少扶養者、つまり16歳未満のお子さんがいるご家庭なら、児童手当の支給を受けることが出来ます。
また、市区町村によって対象年齢に違いはあるものの、子ども医療費の助成も受けることができ、子供の医療費が実質的に無料になります。

 

これらは制度は、お子さんを養っておられるご家庭にとって、とってもありがたい仕組みなのです。

 

他方で、扶養親族がいることでのデメリットというのは、制度的には全くありません。
ただし、扶養するには当然のことですが、養育費や教育費など多額の出費を伴いますけどね。

 

所得税と社会保険料の扶養の扱いの違い

あまり知られていない事実なのですが、税制面での扶養控除をするための申請と、健康保険証などの発行に関する扶養の申請とは、事務的には全く別の世界なのです。

 

どういうことかというと、典型的なサラリーマンと妻、そして年少扶養の子供の4人家族で考えてみますと、所得税の扶養控除を受けるために配偶者控除のみを申請し、他方で健康保険の扶養対象としては配偶者と2人の子供を対象とするなどが可能となります。

 

要するに、この2つの申請はご自分にとって有利な方法で別々に申請することが可能なのです。特に、配偶者との間で税制面での扶養を付ける方を上手に選択することで、かなり節税することができます。

 

次は税金を節約できるようにうまく申告するにはどうやればよいのか、この辺りをもっと掘り下げていきたいと思います。

賢い申告方法を知ろう

年少扶養者の申請を配偶者側に付ける

あなたは、16歳未満の子供の扶養控除を夫婦のどちらに付けていますか?

 

通常、扶養控除は収入の多い方に付けるのが定石ですので、子供の扶養も夫に付けているのではないでしょうか。しかし、これでは損してることになるのです。

児童手当の創設で、所得税における16歳未満の子供の扶養控除がなくなりました。それでも、住民税の計算ために年末調整時、もしくは確定申告時に提出する書類(給与所得者の扶養控除等申告書)には扶養対象者を記載する箇所があります。

 

そこで、収入の多い夫に子供の扶養控除を付けたら節税できると考え、何も考えずに夫側に扶養対象者を記載して提出してしまっている方が多いように思われます。

 

しかしながら、ここで一度立ち止まって考えて頂く必要があります。

 

現行の制度では、平均的な収入を得ている方であれば、年少(16歳未満)の扶養対象者は所得税や住民税から控除をする対象とはならないのです。この場合、サラリーマンならば年末調整にて、自営業の方ならば確定申告において、年少扶養者を記載せずに申請しても良いことになります。もっと言えば、記載する必要すらないのです。

 

そこで、配偶者(妻)に扶養を移すことを考えてみます。

パートタイマーの妻がいる場合、所得税103万を超える収入が課税のラインとなりますので、このラインを死守していても住民税は課税されるという現象が起こってしまうことがあります。
そのため、年少者を扶養している場合は、妻の方に年少者の扶養をつけた方が節税となります。住民税の非課税判定においては、年少者も扶養者としてカウントでき、その分非課税判定の閾値を上げることができるのです。つまり、100万円を超える場合でも、住民税が課税されないことになります。

 

もし配偶者(妻)がフルタイムで働いていない場合、年少扶養を配偶者側に付け、住民税の非課税判定に活用することができます。

 

更に、住民税が非課税になり、住民税非課税世帯と判定された場合は、以下のような追加のメリットが付いてきます。

尚、住民税の非課税世帯とは、他の課税されている方に生活の面倒を見てもらっている(住民税において課税者の扶養となっている場合)は該当しませんのでご注意ください。逆に考えれば、夫婦共働きで配偶者(妻)が夫の扶養に入っていない場合は該当することになります。

  

住民税非課税世帯のメリット
臨時福祉給付金の支給
国民健康保険料の減免
高額療養費が減額
障がい者が住民税非課税世帯にいる場合のNHKの受信料免除

 

この他にも、自治体ごとに下記のような住民税非課税世帯への恩恵が容易されています。

・入院中にかかる食事の自己負担額の減額
・がん検診料金の免除
・予防接種が無料
・保育料の減額

 

ここで気を付けて頂きたいのは、児童手当や子ども医療費助成に関する非課税判定の際の扶養者の人数カウントに年少扶養者の有無が影響してしまいます。前述した住民税の計算のために提出する給与所得者の扶養控除等申告書によるものです。
特に、一般的には中学生以下(地域によっては小学生以下)のお子さんがいらっしゃるご家庭は、児童手当や子ども医療費の助成の支給対象から外れてしまう可能性があります。

 

但し、心配は無用です。

この児童手当や子ども医療費の助成の支給対象から外れてしまう可能性に関しては、後述する収入を考慮して判断することで上手に調整することができます。

 

では、どのような場合に年少扶養を配偶者側に付けるという判断を下せるのでしょうか?
まずは住民税に関して見ていきましょう。

 

住民税の非課税ボーダーラインを知る

年少扶養を配偶者との間でどちらに付けるかで、結果的に住民税を非課税にすることができます。まずは、住民税が非課税になるのはどのような属性の方なのかは以下をご覧ください。

 

住民税の非課税者対象者
生活保護を受けている
未成年者、障がい者、寡婦(夫)で前年の合計所得金額が125万円以下
(ただし、給与所得者は204万4,000円未満)
前年の合計所得金額が各地方自治体の定める額以下
(東京23区では扶養なしの場合35万円。扶養がある場合は35万円 × 本人・扶養者・控除対象配偶者の合計数 + 21万円)
※上記扶養者には年少扶養親族もカウントに含む

 

上記①と②は既に非課税になっている方なのでここでは言及しません。ここで目指すのは、配偶者(妻)の所得を、上記③の「前年の合計所得金額が各地方自治体の定める額以下」にすることを考えます。

通常控除対象とならない年少扶養者を人数カウントとして活用することで、上記住民税の非課税者対象者③の条件を満たすことができ、住民税を非課税にすることができるのです。

 

年少扶養対象者の所得控除で配偶者を非課税にする

上記「住民税の非課税者対象者」一覧③の「前年の合計所得金額が各地方自治体の定める額以下」にすることができれば、結果的に住民税が非課税となります。

 

では、具体的にどのくらいの収入であれば非課税となるのでしょうか?

私が住んでいる三重県桑名市を例に実際の金額を見ていきましょう。

住民税種別毎の課税 扶養家族の有無 判定所得額 所得例
均等割りが課税されない人 扶養家族がない方 35万円×0.9 1人の場合:31.5万円
扶養家族がある方 {35万円 ×(本人+控除対象配偶者・扶養親族の数)+21万円}×0.9 4人家族:144.9万円以下
3人家族:113.4万円以下
配偶者のみ:81.9万円以下
所得割が課税されない人 扶養家族がない方 35万円 1人の場合:35万円
扶養家族がある方 35万円 ×(本人+控除対象配偶者・扶養親族の数)+32万円 4人家族:172万円以下
3人家族:137万円以下
配偶者のみ:102万円以下

 

会社員の夫と、パートタイマーの妻と、16歳未満の子供が2人いる4人家族で試算すると、子供の扶養を妻に付ければ、妻の所得が137万円(35万円×3+32万円)、つまり給与収入221万円(給与所得控除額を引くと137万円)以下なら、住民税(所得割り)が非課税になります。(住民税(均等割り)は一律6000円(平成26年度以降)であるため、今回は考慮していません)

 

逆に言うと、夫の給与収入がこれを超えていると、子供を夫の扶養に入れても意味が無いということになります。

 

例えば、妻の給与収入が220万円で試算してみると、住民税の所得割は10.3万円(給与220万円-給与所得控除84万円-基礎控除33万円=103万円×10%)となります。そこで子供2人を配偶者(妻)の扶養に入れれば住民税の所得割が非課税となり、10.3万円が節税できることになります。

 

申告方法の変更による影響と対策

ここで注意しなければならないのは、夫から子供の扶養を外すと、児童手当や子ども医療費助成などの所得制限にひっかかる可能性があるということです。児童手当の所得制限は、夫婦のうち所得の多い方の額で計算(合算はしない)しますので、所得制限がギリギリの場合は注意してください。実行する際は、慎重に試算することが大切です。

 

ちなみに、児童手当は中学生以下の扶養者がいる家庭が対象で、子ども医療費助成は地域により違いはありますが、児童手当と同様に中学生以下の扶養者を対象にしていることが多いようです。

 

扶養親族等の数 所得額(単位:万円) 収入額(単位:万円)
0人 622 833.3
1人 660 875.6
2人 698 917.8
3人 736 960
4人 774 1002.1
5人 812 1042.1

 

例えば、会社員の夫、パートタイマーの妻、16歳未満の子供が2人いる4人家族で、扶養を妻に付け替えた場合、夫の収入額ではおよそ年収876万円(所得額は660万円)以下であれば問題ないことになります。

 

一般的な会社員家庭であれば扶養の付け替えは実施する価値があるかと思います。

 

仮に扶養を妻に付け替えなかった場合(=扶養親族等の数が3人)は、およそ年収960万円(所得額は736万円)となり、その差は84万円となります。年収がこの辺りのラインにある方は注意してください。尚、手当を受け取る人の所得が、所得制限限度額以上の場合には、特例給付として児童1人につき月額5千円が支給されます。

 

会社から扶養手当が出ていたり、健康保険の関係で、夫から子供の扶養を外せないという方もいるかもしれませんが、会社の扶養手当や健康保険と税金は関係ありません。会社には、これまで通り子供の扶養があると申請しておいて、夫婦で確定申告をして、扶養を妻に付け替えればOKです。夫の住民税額は変わりません。

 

まとめ

税の扶養と社会保険の扶養は全く別のものであるということが理解できたかと思います。

 

結論としては、税の年少扶養を外してメリットがあるのは、以下のケースと言えます。

 

配偶者(妻)がパートなどである程度の収入があるケース
住民税が課税されるギリギリの収入がある配偶者(妻)がおいでで、夫は所得税や住民税が課税される程の収入があり、年少扶養親族がいるご家庭となります。

また、児童手当や子ども医療助成の所得制限を考慮し、夫の年収が875.6万円以下、配偶者(妻)の年収が221万円以下(年少扶養が2人場合)の基準を満たしている必要があります。2人以上の年少扶養がある場合は更に閾値が上がります。

このケースでは、配偶者(妻)の方に年少扶養を付けることで、住民税(所得割り)を非課税にすることができます。

 

いかがでしたでしょうか?

このような、所得税と住民税の課税の判定差により、年少扶養を付け方で税額が変わってくることがお判りいただけたかと思います。

他にもこのような事例はいくつかありますので、これからもあなたにとってメリットとなる情報を提供し続けたいと思います。

 

では、また次回。

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